家族やパートナーにワキガを指摘されたら?受け止め方と今日からできる対策
目次
はじめに
「家族に『ちょっと脇のニオイが気になる』と言われてしまった」
「恋人に遠回しにニオイのことを指摘されて、頭が真っ白になった」
「配偶者から言われて以来、人と近づくのが怖い」
身近な人からニオイを指摘されると、強いショックを受けるのは当然のことです。大切な人だからこそ、言われた言葉が心に深く残り、「本当にワキガ(腋臭症)なのか」「どうすればいいのか」と一人で悩んでしまう方も少なくありません。
この記事では、日本形成外科学会などがまとめたガイドラインをもとに、指摘を受けた直後の気持ちの整理、本当にワキガなのかを確かめるときの注意点、相手との話し方、今日からできる対策、そして受診の流れまでを順番にまとめました。まずは深呼吸をして、できることから一つずつ確認していきましょう。
まず落ち着く:指摘を受けた直後の気持ちの整理

ショックを受けるのは自然なこと
ニオイは自分の体の内側に関わる話題で、人格を否定されたように感じてしまう方もいます。落ち込む、恥ずかしい、相手の顔をまともに見られないといった反応は、誰にでも起こりうるものです。気持ちが沈んでいる自分を責めず、「今はショックを受けている状態だ」と受け止めるところから始めてみてください。
今すぐ結論を出さなくていい
指摘された直後は、「自分はワキガに違いない」「もう人前に出られない」と極端な方向に考えが傾きがちです。しかし、一言の指摘だけで状態を判断することはできません。ニオイの感じ方には個人差があり、そのときの体調や汗の量、衣類の状態でも変わります。まずは事実を確かめる段階だと考え、結論は急がないことが大切です。
指摘した側の事情にも目を向ける
ニオイのことを伝えるのは、言う側にとっても勇気がいることです。「傷つけたくないけれど、黙っているのも心配」と迷った末に口にしてくれた可能性もあります。もちろん、言い方がきつくて傷ついたという場合もあるでしょう。その気持ちは大切にしながら、「どんな場面で気になったのか」を落ち着いて聞くことが、次の一歩につながります。
本当にワキガなのか?自己チェックの限界を知る
自分のニオイは自分では分かりにくい
同じニオイを長く嗅ぎ続けると感じにくくなることは、日常でもよく経験します。そのため、自分の脇のニオイを自分で正確に判断するのは簡単ではありません。「自分では何も感じない」からといって問題がないとは言い切れず、反対に「強く感じる」からといってワキガとは限りません。
診断で確認されるポイント
診断に必要なのは、ワキガ特有のニオイがあるかどうかの確認です。診断の方法としては、脇にガーゼを約5分はさみ、そのニオイを医療者が確認するガーゼテスト法が推奨されています。簡便な方法ですが、判定が人の感覚に頼るため客観性に乏しいという弱点も指摘されています。ご自身でニオイを確かめる場合は、さらに限界があると考えておくとよいでしょう。
家族歴と耳垢のタイプも手がかりになる
ワキガは家族内で見られることが多く、遺伝の影響を受けます。耳垢がねっとりした湿ったタイプ(湿型)の方に多いことも知られています。日本人の手術を受けたワキガの方79人を調べた研究では、ほぼ全員にあたる78人が湿型耳垢の遺伝子型でした。一般の日本人では約3人に1人強(35.4%)です(Nakano et al. 2009)。日本人723人を調べた別の研究でも、10人中9人以上(96.1%)が湿型耳垢でした(Morioka et al. 2013)。
ただし、湿型耳垢だからといって必ずワキガというわけではありません。あくまで手がかりの一つとして考えてください。
汗のニオイや衣類のニオイとの違い
ニオイの原因は、ワキガだけとは限りません。汗をかいたあとの一般的なニオイや、衣類に残ったニオイを指摘されたケースも考えられます。一方で、ワキガの方の約6割(61.8%)に多汗症もあわせてみられたという報告もあります(Morioka et al. 2013)。原因の切り分けは自己判断では難しいため、気になる場合は医療機関で確認するのが確実です。
相手との話し方:責めず、隠さず、具体的に聞く

いつ、どんな場面で気になったのかを聞く
「ニオイがする」という一言だけでは、対策の立てようがありません。夏の通勤後なのか、運動のあとなのか、緊張したときなのか。落ち着いたタイミングで、相手に具体的に聞いてみましょう。「責めているわけではなく、対策を考えたいから教えてほしい」と前置きすると、相手も答えやすくなります。
「気にしすぎ」と言われたときの考え方
周囲から「そんなに気にしなくていい」と言われることもあります。励ましとして受け取れるときはよいのですが、本人の不安が続くようなら、気のせいと片づけずに確認することも一つの方法です。逆に、気にしすぎて人との距離を取りすぎてしまうと、日常生活がつらくなります。事実を確かめて安心するためにも、医療機関への相談は選択肢になります。
家族と恋人・配偶者で、伝え方を少し変える
家族には、日常生活の中で率直に相談しやすい反面、遠慮のない言い方になりがちです。恋人や配偶者には、「大切に思っているからこそ正直に教えてほしい」と気持ちを添えると、お互いに受け止めやすくなります。どちらの場合も、相手の言い方を責めるのではなく、「教えてくれてありがとう」と一度受け止めてから、一緒に対策を考える姿勢が大切です。
一緒に対策を決めて、定期的に確認する
対策を始めたら、「やってみたけれど、どう感じる?」と、相手にときどき聞いてみましょう。一人で抱え込まず、相手を味方にすることで、気持ちの負担も軽くなります。ただし、毎回の確認が互いの負担になることもあるため、頻度は二人で決めておくのがおすすめです。
今日からできるセルフケア
対策の効果は一時的だと知っておくことが最も重要
セルフケアには、ニオイを和らげる効果が期待できるものがあります。ただし、制汗剤やデオドラントで得られる効果は一時的とされています。続けることでニオイが軽くなる場合もありますが、根本から体質が変わるわけではないことを知っておくと、気持ちの面で振り回されにくくなります。
脇毛の処理
脇毛を処理すると、ニオイが改善するとされています。剃毛した場合、24時間後まで有意な改善がみられたという報告があります。一方で、レーザー脱毛のあとに多汗やワキガのニオイが出てきたという報告もあり、はっきりした因果関係はわかっていません。脱毛を考えている場合は、事前に医師へ相談してください。
制汗剤・デオドラントと消毒薬入りの製品
制汗剤やデオドラントは、一時的なニオイの改善に有効です。医療機関では塩化アルミニウムを含む製剤が使われることがあります。また、消毒薬を含む製品も、継続して使えば有効とされています。ニオイのもとは、皮膚の常在菌が汗を分解してできる物質です。ただし、これらは基本的に保険適用外です。肌が荒れたり赤くなったりしたときは、使用をやめて相談してください。
食事・入浴・ストレス、塗り薬の注意
「肉を食べるとニオイが強くなる」「入浴の回数が少ないとワキガになる」といった話を聞くことがありますが、これらとの関連を裏づける十分な根拠はありません。一方で、ストレスは汗の量を増やし、ニオイを悪化させる可能性があるとされています。指摘されたことで強いストレスを感じると、かえってニオイが気になりやすくなることもあります。
なお、抗生物質入りの塗り薬は、一時的に症状が軽くなることがあるものの、耐性菌(薬が効きにくい菌)が出る心配があり、安易に使うべきではないとされています。自己判断での使用は避け、必要な場合は医師に相談してください。
セルフケアで限界を感じたら:受診の流れと治療の選択肢

相談するタイミングの目安
次のような場合は、医療機関への相談を考えてみてください。
- セルフケアを続けても、指摘が続いている
- ニオイが気になって、人と会うこと自体がつらい
- 本当にワキガなのか、自分では判断がつかない
ワキガは20歳前後でピークを迎え、年齢を重ねると徐々に軽くなる傾向があります。ただし、「待てば治る」と言い切れるものではなく、悩みが続くなら早めに相談して構いません。
受診の流れ
ワキガ(腋臭症)の治療は、形成外科などで行われています。流れは医療機関によって異なりますが、一般的には、問診と診察でニオイや汗の状態を確認し、必要に応じてガーゼテストなどを行います。そのうえで、症状に合った治療の選択肢について説明を受け、十分に納得してから治療を決めます。診察を受けたからといって、その場で手術を決める必要はありません。
手術の位置づけと効果
日本形成外科学会などがまとめた診療指針では、保険診療で行う外科的治療の第一選択は皮下剪除法とされています。脇の汗腺(ニオイのもとになる汗腺)を直接目で見ながら取り除く方法で、最も確実な外科治療法の一つと位置づけられています。日本の病院で手術を受けた79人を調べた研究では、においセンサーで測った強さが、手術前の約4割にまで下がりました(Kubomura et al. 2022)。
また、日本語・英語・韓国語・中国語の8本の論文、計1,179人をまとめた分析では、切開して行う手術のほうが、吸引する方法よりも再発や効果不十分になる割合が少ないという結果でした。満足度はどちらも同じくらい高く、吸引する方法のほうが手術直後の合併症は少ないという結果でした(Nomura et al. 2020)。どの方法が合うかは人によって異なるため、診察で医師とよく相談することが大切です。
医療機関への相談
創業74年以上のドクターミナガワ渋谷整形には、日本専門医機構認定の形成外科専門医が在籍しています。2025年の年間ワキガ手術件数は831件です。直視下反転剪除法は、再発しにくい根治性の高い治療法です。なお、ミラドライについては、当院では推奨していません。
ワキガ治療は、症状の程度によって保険適用となる可能性があります。保険適用かどうかは、診察時に確認いたします。抜糸のための来院はなく、ご来院は手術日と、手術の翌日または翌々日の消毒日の合計2日です。仕事や家事、パートナーとの時間を大きく空けにくい方も、日程を調整しやすいのではないでしょうか。
まとめ
ニオイを指摘されたときは、まず強いショックを受けている自分を認めることから始めましょう。そして、すぐに結論を出さず、指摘してくれた相手に具体的な場面を聞き、本当にワキガなのかを確かめていくことが大切です。
自分でできる確認やセルフケアには限界があり、制汗剤やデオドラントの効果は一時的です。ガーゼテストなどの診察で確かめたいとき、セルフケアを続けても悩みが残るときは、医療機関への相談が選択肢になります。
ワキガは遺伝などの体質が関わるもので、あなたの努力や清潔さが足りないという話ではありません。一人で抱え込まず、必要であれば無料カウンセリングへお気軽にお越しください。
参考文献
- 日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会 編. 形成外科診療ガイドライン 改訂第2版 第7編 腋臭症診療ガイドライン. 金原出版; 2021.
- Nakano M, et al. A strong association of axillary osmidrosis with the wet earwax type determined by genotyping of the ABCC11 gene. BMC Genet. 2009; PMID 19650936
- Morioka D, et al. Clinical features of axillary osmidrosis: a retrospective chart review of 723 Japanese patients. J Dermatol. 2013; PMID 23451913
- Kubomura K, et al. Objective Odor Assessment in Patients with Osmidrosis. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2022; PMID 36299814
- Nomura M, et al. Open versus Closed Surgery for Axillary Osmidrosis: A Meta-Analysis of Articles Published in Four Languages. Ann Dermatol. 2020; PMID 33911792
