片方の脇だけ臭うのはワキガ?左右差が出る理由と受診の目安

はじめに

「右の脇だけ、なぜかにおいが強い気がする」

「左は何ともないのに、片側だけ汗じみが気になる」

「これってワキガ(腋臭症)なのか、それとも別の原因なのか不安」

左右どちらか片方の脇だけにおいが強いと感じると、ワキガなのかどうか、ほかに病気が隠れていないか、気になりますよね。

ワキガは本来、両方の脇にある汗腺(アポクリン汗腺)が関わる体質で、片側だけに起こるものではないと考えられています。日本形成外科学会などがまとめた診療ガイドラインでも、ワキガは両脇の症状として扱われています。それでも実際には、左右でにおいの感じ方に差が出ることはあります。

ただし、左右差の理由については、はっきりした根拠が示されていないものも多いのが現状です。この記事では、根拠のある範囲と、根拠がはっきりしない範囲を分けながら、片側だけにおうときの考え方、セルフチェックの方法、受診の目安を整理します。

ワキガのにおいと左右差の基本

ワキガ(腋臭症)はなぜにおうのか

ワキガのにおいは、汗そのものではなく、汗に含まれる成分を皮膚の常在菌が分解することで生まれます。分解の過程でできる低級脂肪酸や硫黄化合物などが、あの独特のにおいの原因です。

汗には、全身にあるエクリン汗腺からの汗と、脇などの限られた場所にあるアポクリン汗腺からの汗があります。ワキガに深く関わるのは、このアポクリン汗腺です。アポクリン汗腺は左右の脇どちらにもあるため、体質としてのワキガなら両脇に出るのが基本です。

体質と遺伝の関係

ワキガは家族内で見られることが多く、優性遺伝の形で受け継がれやすいとされています。また、耳垢がやわらかく湿っている「湿型耳垢」の人にワキガが多いことも知られています。

日本人723人を調べた研究では、ワキガの人のほぼ全員(約96%)が湿型耳垢でした。一般の日本人では湿型耳垢は少数派なので、これは非常に高い割合です(Morioka et al. 2013)。耳垢の状態は、自分で確認できる目安のひとつです。

ただし、湿型耳垢でも全員がワキガになるわけではなく、耳垢だけで診断することもできません。

発症する時期と年齢による変化

ワキガは、脇毛が生え始める思春期ごろから出てきて、成長とともに強まり、20歳前後でピークを迎えるとされています。その後、年齢を重ねると徐々に軽くなっていく人が多いといわれます。

前述の日本人723人の研究では、初めて受診した年齢の平均は約29歳でした。においに悩みながら、長い間受診せずに過ごす人も少なくないことがうかがえます。

片側だけと感じる人は多いのか

「片側だけにおう」と感じる人がどのくらいいるのか、その割合を示す信頼できるデータは、今回確認した範囲では見つかりませんでした。したがって、「よくあること」とも「まれなこと」とも、はっきりとは言えません。

大切なのは、左右差があるからといってすぐにワキガではないと決めつけないこと、反対に、片側だけだからワキガだと決めつけないことです。

左右差が出る理由として考えられること

タオルと石けん

汗の量や汗腺の個人差

体の左右は完全に対称ではなく、汗の出方やにおいの強さに多少の差があっても不思議ではありません。左右の汗腺の量や活動の差が、においの差につながっている可能性は考えられます。

ただし、左右の汗腺の量にどのくらい差があるのか、その差がにおいにどの程度影響するのかについて、はっきりした根拠はありません。「汗腺の個人差が原因」と断定することはできないというのが正確なところです。

脇毛の生え方と処理の違い

脇毛は汗や皮脂、菌が付着しやすい場所です。脇毛の処理でにおいが改善することが知られており、剃毛の効果は24時間後まで確認されています。

そのため、左右で脇毛の量や処理の頻度、剃り残しの程度に差があると、においの感じ方に差が出る可能性があります。利き手でない側は処理が雑になりやすい、という人もいるかもしれません。

なお、レーザー脱毛の後に、汗やにおいが気になり始めたという報告もあります。左右で脱毛の回数や範囲に差がある場合は、その影響も頭の片隅に置いておくとよいでしょう。

利き腕や衣類の摩擦

利き腕の側は動かす機会が多く、汗をかきやすいのではないか、という見方があります。また、バッグを片方の肩にかける習慣や、衣類の縫い目が当たる位置の違いで、片側だけ蒸れやすくなることも想像できます。

こうした要素はもっともらしく聞こえますが、利き腕や衣類の摩擦が脇のにおいの左右差を生むと確かめた研究は、確認できた範囲ではありません。「そうかもしれないが、はっきりした根拠はない」と受け止めておくのが安全です。

洗い方やケアのムラ

利き手側は洗いやすく、反対側は洗い残しが出やすいなど、日々のケアにムラがあることもあります。制汗剤や消臭剤を片側にだけ多く塗っている、ということも意外とあります。

ケアのムラは、自分で見直せる部分です。まずは両側を同じ条件で洗い、同じようにケアしたうえで、においの差が続くかを確認してみてください。

片側だけのにおいで疑いたい、ほかの原因

皮膚のしこり(粉瘤など)がないか

脇の皮膚の下に、しこりのようなふくらみがあるときは、粉瘤(アテローム)などの皮膚の病気の可能性があります。粉瘤は皮膚の下にできる袋状の良性のできもので、細菌感染などで炎症を起こすことがあります。

しこりが片側にだけあって、その側だけにおいが気になる場合は、ワキガではなく皮膚の病気が関わっているかもしれません。自分でつぶしたり、押し出したりすると、炎症が悪化することがあるため避けてください。

赤み・腫れ・痛み・膿がある場合

脇の片側に赤み、腫れ、痛み、膿などがある場合は、細菌による皮膚の感染症や、毛穴まわりの炎症などの可能性があります。このようなときは、ワキガのセルフケアよりも、皮膚の病気としての診察が優先です。

「においが気になるだけ」と思っていても、実際には皮膚の症状が隠れていることがあります。見た目に変化があるなら、早めに受診しましょう。

多汗症や菌の増え方との関係

日本人723人の研究では、ワキガの人のうち約6割に多汗症の併存が見られました(Morioka et al. 2013)。汗の量が多い人は、においの感じ方も強くなりやすいと考えられます。

また、脇の皮膚の状態や常在菌の増え方は人によって違い、ストレスで発汗が増えることがにおいを悪化させる可能性もあります。一方で、入浴の頻度や肉中心の食事などとワキガの関係は、はっきりした根拠に乏しいとされています。

受診を考えたい目安

次のような場合は、自己判断で様子を見続けず、医療機関への相談を検討してください。

  • 脇にしこり、赤み、腫れ、痛み、膿がある
  • 片側のにおいが、急に強くなった、または変化した
  • セルフケアを続けても、数週間以上においが気になる
  • 家族にワキガの人がいて、湿型耳垢でもある
  • においが気になって、仕事や人づきあいに支障が出ている

自分でできるチェックと対策

洗面台で手を洗う女性

においの確認方法と、自己判断の限界

診療の場では、脇に5分ほどガーゼをはさんで、そのにおいを医師が確認する「ガーゼテスト」が診断の手がかりとして用いられます。簡便な方法ですが、人の嗅覚に頼るため客観性に乏しい点が弱みとされています。

自分のにおいは慣れてしまって気づきにくく、反対に、気にしすぎて強く感じることもあります。自己判断には限界があるため、においの有無や強さを正確に知りたいときは、診察で確認するのが確実です。

脇毛の処理と清潔の保ち方

脇毛の処理は、においの改善に役立つ可能性があります。剃毛する場合は、皮膚を傷つけないように、清潔なカミソリで両脇を同じように処理しましょう。

洗うときは、石けんをよく泡立て、こすりすぎずにやさしく洗います。強くこすると皮膚が荒れ、かえって炎症やにおいの原因になることがあります。

制汗剤やデオドラントの位置づけ

制汗剤やデオドラントは、一時的なにおいの改善に有効です。医療機関では塩化アルミニウムを含む製剤が用いられることもあります。ただし、効果は一時的で、使い続ける必要があります。

片側だけに偏って使わず、両側に同じように使うことをおすすめします。使用後に赤みやかゆみが出た場合は、中止して相談してください。

避けたい対処

消毒薬や抗生物質の塗り薬を、自己判断で長く使うのはおすすめできません。耐性菌が出てくる心配があり、安易な使用は避けるべきとされています。

また、においが気になるあまり、一日に何度も強くこすり洗いすることも逆効果です。続けても改善しないときは、早めに専門家に相談しましょう。

それでも気になる場合は

診察室で女性の相談を聞く医師

セルフケアの限界

左右のケアをそろえても、においの差や悩みが続く場合は、セルフケアだけで解決するのは難しいかもしれません。ワキガの体質そのものは、洗浄や制汗剤で根本的に変えることはできないためです。

また、片側だけに皮膚の症状がある場合は、そもそもワキガ以外の原因を調べる必要があります。どちらの場合も、医療機関で原因をはっきりさせることが、解決への近道です。

医療機関への相談

ドクターミナガワ渋谷整形は、創業74年以上の歴史を持ち、日本専門医機構認定の形成外科専門医が在籍しています。2025年の年間ワキガ手術件数は831件でした。脇のにおいに悩む方の診察経験が豊富で、ワキガかどうか、ほかの皮膚の病気がないかを、診察で確認することができます。

治療が必要と判断した場合、直視下反転剪除法は汗腺を直接見ながら取り除く、再発しにくい根治性の高い治療法です。日本形成外科学会などがまとめた診療指針では、剪除法(皮弁法)は最も確実な外科治療法のひとつとされています。なお、ミラドライについては、当院では推奨していません。

ワキガ治療(皮弁法)は、症状の程度によっては保険適用で受けられる可能性があります。保険適用の可否は診察時に確認いたします。当院では抜糸のための来院はなく、ご来院は手術日と、手術の翌日または翌々日の消毒日の合計2日です。

診察で調べること

診察では、においの強さや皮膚の状態、しこりや炎症の有無、汗の量、耳垢の状態、家族歴などを確認します。片側だけにおうという悩みも、そのまま医師に伝えてください。

左右差の理由についてはっきりした根拠がない部分も多いため、「なぜ片側だけなのか」は、実際に皮膚を診てもらうことで見えてくることがあります。気になる点は、診察時に遠慮なく相談してください。

まとめ

  • ワキガは両脇のアポクリン汗腺が関わる体質で、基本的には両側に出る
  • 左右差の理由として、汗の量、脇毛の処理、利き腕、衣類の摩擦、ケアのムラなどが考えられるが、はっきりした根拠がないものも多い
  • 片側だけのしこり、赤み、腫れ、膿がある場合は、粉瘤などの皮膚の病気の可能性があるため、早めに受診する
  • セルフケアで改善しない、または生活に支障がある場合は、医療機関に相談する

片側だけのにおいは、ワキガなのか別の原因なのか、自分では判断しにくいものです。不安を抱えたままにせず、必要であれば無料カウンセリングへお気軽にお越しください。

参考文献

日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会 編. 形成外科診療ガイドライン 改訂第2版 第Ⅶ編 腋臭症診療ガイドライン. 金原出版; 2021.

Morioka D, et al. Clinical features of axillary osmidrosis: a retrospective chart review of 723 Japanese patients. J Dermatol. 2013; PMID 23451913