ホルモンバランスとワキガの関係とは?生理・妊娠・更年期によるニオイの変化を解説

はじめに

「生理前になると脇のニオイが気になる」

「妊娠してから、自分のニオイが変わった気がする」

「更年期になって、急に汗やニオイが気になるようになった」

こうした変化を感じて、ホルモンバランスとワキガ(腋臭症)に関係があるのかと不安になる女性は少なくありません。女性の体は、思春期、毎月の生理周期、妊娠・出産、更年期と、人生の中でホルモンの状態が何度も大きく変わります。その節目ごとにニオイの感じ方が変わるように思えるのは、自然なことです。

この記事では、日本形成外科学会などがまとめた診療ガイドラインや、日本人を対象にした研究をもとに、ワキガとホルモンの関わりを整理します。わかっていることと、まだはっきりした根拠がないことを分けてお伝えしますので、ご自身の状況と照らし合わせながら読んでみてください。

ワキガのニオイが生まれる仕組みとホルモンの関わり

まずは、ニオイが生まれる仕組みと、ホルモンがどこに関わっているのかを確認しましょう。

窓辺でハーブティーを飲む女性

ニオイの元はアポクリン汗腺から出る汗

ワキガ(腋臭症)のニオイの元になるのは、脇に多いアポクリン汗腺から出る汗です。汗そのものはほぼ無臭ですが、アポクリン汗腺の汗には脂質やたんぱく質などが含まれています。これが皮膚の表面にいる常在菌に分解されることで、特有のニオイが生じます。

ふだん体温調節のために出る汗はエクリン汗腺から出る汗で、こちらはほとんど水分です。ニオイの主役はあくまでアポクリン汗腺の汗であり、汗の量が多いことと、ワキガのニオイが強いことは、必ずしも同じではありません。

アポクリン汗腺は男性ホルモンの影響を受ける器官

アポクリン汗腺は、ホルモンの影響を受けやすい器官だと考えられています。日本の大分医科大学(当時)の研究では、ワキガの方の脇の皮膚に、男性ホルモンを受け取るための仕組み(受容体)が確認されました(Kurata ら, 1990)。同じ大分医科大学のグループは、男性ホルモンをより強い形に変える酵素が、アポクリン汗腺に存在することも報告しています(Sato ら, 1998)。

どちらも調べた人数は数人から十数人と少なく、この結果だけでワキガの原因がホルモンだと言い切ることはできません。ただ、アポクリン汗腺がホルモンの影響を受ける器官であることを示す手がかりとして、よく知られています。

女性にも男性ホルモンは関わっている

男性ホルモンと聞くと男性だけのものに思えますが、女性の体にも少量の男性ホルモンがあります。前述の大分医科大学の研究では、脇の皮膚で男性ホルモンを受け取る仕組みの量に、男女で大きな差はありませんでした(Kurata ら, 1990)。

実際に、日本人のワキガ患者723人を調べた研究では、約10人中7人が女性でした(492人が女性、231人が男性。Morioka ら, 2013)。ワキガは男性に特有のものではなく、女性にも多い悩みだとわかります。

思春期にニオイが気になり始めるのはなぜ?

ホルモンの変化が最も大きいのは、体が子どもから大人へと変わる思春期です。ワキガの多くが、この時期に気づかれます。

脇毛が生え始める頃に始まるのが一般的

ワキガは、脇毛が生え始める頃の前後に始まるのが通常です。アポクリン汗腺は思春期になると働きが活発になり、それまでほとんどなかったニオイが目立ち始めます。

思春期は、体のあちこちでホルモンの分泌量が大きく変わる時期です。ニオイの変化がこの時期に重なることから、ホルモンの変化が関わっていると考えられています。ただ、ホルモンのどの部分が、どのくらいニオイに影響するのかまでは、はっきりとはわかっていません。

成長とともに強まり、20歳前後でピークに

ワキガのニオイは、成長とともに強くなり、20歳前後でピークになるとされています。そして壮年期(働き盛りの年代)以降は、徐々に軽快していくのが一般的です。

思春期から20歳前後は、体のホルモンの状態が大きく変わっていく時期と重なります。一方で、年齢とともに軽くなっていく傾向があるというのは、更年期以降の悩みを考えるときにも大切な視点です。

ホルモンだけでなく、遺伝も大きく関わる

ホルモンの変化はニオイが強まる「きっかけ」の一つに過ぎません。ワキガになりやすいかどうかは、生まれつきの体質、つまり遺伝が大きく関わっています。

ワキガは家族に同じ悩みを持つ人がいることが多く、耳垢の種類(湿型・乾型)とも深く関係しています。日本人のワキガ患者723人を調べた研究では、約96%が耳垢の湿ったタイプ(湿型)でした(Morioka ら, 2013)。長崎大学の研究でも、手術を受けた日本人のワキガ患者79人のうち、約99%(78人)が湿型耳垢の遺伝子型でした。一般の日本人で湿型の遺伝子型を持つ人は、約35%です(Nakano ら, 2009)。

つまり、ホルモンの変化が起きても、体質的にワキガになりにくい人もいると考えられます。「ホルモンバランスが乱れたからワキガになった」と自分を責める必要はありません。

生理周期とニオイの変化の関係

ここからは、女性が毎月経験する生理周期と、ニオイの関係を見ていきます。

カレンダーとノートとハーブティー

生理前後のニオイの変化にはっきりした根拠はない

生理前になるとニオイが強くなる気がする、という悩みはよく聞かれます。生理周期の中で、女性ホルモンの量は大きく変わるためです。

ただし、生理周期とワキガのニオイの強さの関係について、確かな結論を出した日本人対象の研究は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。生理前後でワキガが悪化するとも、変わらないとも、はっきり言い切れる根拠は現時点ではありません。気になる場合は、診察時に医師へご相談ください。

ニオイの感じ方や汗の量が変わっている可能性

ニオイが変わったように感じる背景には、いくつかの可能性があります。生理前は体調やメンタルが揺らぎやすく、ふだんより自分のニオイに敏感になりやすい人もいます。

ストレスで汗が増え、ワキガのニオイが強くなる可能性は示唆されています。生理前の不調がストレスとなり、汗やニオイに影響している可能性は、考えられるところです。

ただ、ニオイの強さが本当に変わっているのか、感じ方が変わっているのかを、自分だけで見分けるのは難しいものです。ご家族や親しい人に確かめてもらうのも、一つの方法です。

生理中も続けやすい基本のセルフケア

生理中は、脇のケアも負担に感じやすい時期です。無理のない範囲で、次のような基本のケアを続けてみてください。

まず、脇を清潔にすることです。入浴やシャワー、汗を拭き取ることで、ニオイの元になる物質が物理的に取り除かれます。ただし、入浴や食生活とニオイの関係について、確かなエビデンスは乏しいとされています。

次に、制汗剤やデオドラント製品の活用です。これらは一時的にニオイを改善する効果が期待できますが、あくまで一時的なものです。肌が敏感になりやすい時期は、かぶれないよう使い方に注意しましょう。

脇毛の処理も、ニオイの軽減に役立つことがあります。海外の研究では、剃毛後にニオイが減り、その効果は24時間ほど続きました(Lanzalaco ら, 2016。男性30人の研究)。生理中で肌が荒れやすいときは、カミソリ負けに気をつけてください。

妊娠・産後にニオイが変わったと感じるとき

妊娠・出産は、女性の人生の中でもホルモンの状態が最も大きく変わる出来事です。

妊娠中のニオイの変化を示すはっきりした根拠はない

妊娠中は、女性ホルモンの量が大きく変わり、体質や体調にもさまざまな変化が起こります。そのため、ニオイが変わったと感じる人もいるでしょう。

しかし、妊娠によってワキガのニオイが強くなる、あるいは弱くなると示した確かな研究は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。妊娠中のニオイの変化は、個人差が大きいと考えるのが現実的です。

体調の変化でニオイの感じ方そのものが変わっている可能性もあります。妊娠中の治療については、別の記事で詳しく解説しているため、ここでは深入りしません。

産後は睡眠不足やストレスにも注意

産後は、ホルモンの状態がまた大きく変わるうえ、授乳や夜間の育児で睡眠不足になりやすい時期です。慣れない育児による緊張やストレスで、汗が増えたと感じる人もいます。

ストレスは汗を増やしてワキガのニオイを強める可能性があります。産後のニオイの変化には、ホルモンそのものよりも、生活の変化による影響が大きい場合もあると考えられます。

ただ、その影響の大きさを数字で示せる研究は、現時点ではありません。気になるときは、ひとりで悩まず、診察時に医師へ相談してください。

赤ちゃんのためにもできる範囲で清潔を保つ

産後は、赤ちゃんを抱っこする機会が増え、自分のニオイが気になりやすい時期です。できる範囲で、汗をこまめに拭いたり、通気性のよい服を選んだりして、ニオイの元を溜めない工夫をしてみてください。

一方で、完璧にケアしようとすると、かえって負担になります。睡眠や休息をとることも、ストレスを減らす大切なケアです。

更年期の汗・ニオイとワキガの違い

閉経前後の更年期は、女性ホルモンが大きく減っていく時期です。この時期にも、汗やニオイの悩みが出てきます。

ワキガは壮年期以降、徐々に軽くなっていくのが一般的

ワキガは20歳前後でピークとなり、壮年期以降は徐々に軽快していくのが一般的です。そのため、更年期になって初めて強いワキガが始まる、というのは典型的な経過ではありません。更年期に新しく気になり始めたニオイが、必ずしもワキガとは限らないということです。

ほてり・多汗とワキガは別のもの

更年期には、急に顔や体がほてって汗が出る症状が現れる人がいます。この汗は、体温を調節する仕組みの乱れで起こるもので、ワキガのニオイの元になるアポクリン汗腺の汗とは別のものです。

更年期の汗が増えたことで、脇が蒸れて雑菌が増え、ニオイが気になる場合もあります。ただ、更年期のホルモンの減少がワキガのニオイにどう影響するのか、確かな根拠は今回確認した範囲では見つかりませんでした。

大きな変化があるときは別の原因も考える

感染症や内分泌疾患(ホルモンの病気)などの基礎疾患があると、全身に汗が増えることがあるとされています。そのため、汗が急に増えた、全身に汗をかく、体重の変化や動悸もある、といった場合は、ワキガ以外の原因が隠れていないかを確認することが大切です。

ニオイや汗が急に変わったと感じたときは、自己判断せず、まずは医療機関で相談してみてください。

ホルモンの変化が気になるときのセルフケアと医療機関への相談

ホルモンの変化がワキガにどう関わるかは、まだわからない部分が多くあります。だからこそ、できることから始めましょう。

タブレットを使って説明する医師

毎日の基本ケアで負担を減らす

ホルモンの状態に関係なく取り入れられる基本のケアは、次のとおりです。

まず、こまめに汗を拭き、脇を清潔にします。次に、制汗剤やデオドラント製品を、一時的なケアとして上手に使います。そして、脇毛の処理でニオイを軽くできる場合があります。

ただし、レーザー脱毛の後に、多汗やニオイが出たという報告もあります。脱毛を検討する場合は、事前に医師へご相談ください。

ストレスとうまく付き合う

ホルモンバランスが乱れやすい時期は、ストレスもたまりやすいものです。ストレスは汗を増やし、ニオイを強める可能性があると示唆されています。

十分な睡眠、休息、気分転換を意識して、心身の負担を減らしていくことも、ニオイの悩みと向き合うための大切なケアです。

セルフケアで改善しないときは医療機関に相談を

セルフケアを続けても悩みが続く場合は、ワキガ(腋臭症)の治療を行う医療機関への相談をおすすめします。制汗剤などによる対策は一時的なものです。日本形成外科学会などがまとめた診療指針では、汗腺を直接見ながら取り除く剪除法(皮弁法)は最も確実な外科治療法の1つとされ、保険診療での外科治療の第一選択は皮下剪除法とされています。

創業74年以上のドクターミナガワ渋谷整形には、日本専門医機構認定の形成外科専門医が在籍しています。2025年の年間ワキガ手術件数は831件です。当院で行う直視下反転剪除法は、再発しにくい根治性の高い治療法です。なお、ミラドライは、当院では推奨していません。

ワキガ治療は、症状の程度によっては保険適用となる可能性があります。保険適用の可否は、診察時に確認いたします。抜糸のための来院はなく、ご来院は手術日と、手術の翌日または翌々日の消毒日の合計2日です。ホルモンの変化とニオイの関係など、気になることもあわせて診察時にご相談いただけます。

まとめ

ホルモンバランスとワキガの関係について、この記事の内容を整理します。

ワキガのニオイの元になるアポクリン汗腺は、男性ホルモンの影響を受ける器官だと考えられています。ワキガは思春期に始まり、20歳前後でピークとなって、壮年期以降は徐々に軽くなるのが一般的です。ただし、ワキガになりやすいかどうかには、遺伝も大きく関わります。

一方で、生理周期、妊娠、更年期といった女性ホルモンの変動が、ワキガのニオイの強さを実際にどう変えるのかについては、はっきりした根拠がありません。ニオイの感じ方の変化や、ストレスによる汗の増加が影響している可能性もあります。

ニオイが気になるときは、ひとりで悩まず、医療機関へ相談することが大切です。無料カウンセリングへお気軽にお越しください。

参考文献

日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会 編. 形成外科診療ガイドライン 改訂第2版 腋臭症診療ガイドライン(CQ1, 5, 6, 7, 8). 金原出版; 2021

Kurata S, et al. Intranuclear androgen and cytosolic receptor concentrations in the axillary skin of osmidrosis. Arch Dermatol Res. 1990; PMID 2317081

Sato T, et al. Predominance of type I 5alpha-reductase in apocrine sweat glands of patients with excessive or abnormal odour derived from apocrine sweat (osmidrosis). Br J Dermatol. 1998; PMID 9892945

Morioka D, et al. Clinical features of axillary osmidrosis: a retrospective chart review of 723 Japanese patients. J Dermatol. 2013; PMID 23451913

Nakano M, et al. A strong association of axillary osmidrosis with the wet earwax type determined by genotyping of the ABCC11 gene. BMC Genet. 2009; PMID 19650936

Lanzalaco A, et al. A comparative clinical study of different hair removal procedures and their impact on axillary odor reduction in men. J Cosmet Dermatol. 2016; PMID 26663394