妊娠中・授乳中にワキガ治療はできる?ホルモン変化と体臭の関係を解説
目次
はじめに
「妊娠してから、脇のにおいが気になるようになった気がする」
「授乳中だけど、ワキガの手術って受けられるの?」
「赤ちゃんへの影響を考えると、誰にも相談できない」
妊娠・出産の前後は体の変化が大きく、においの悩みがいつも以上に気になりやすい時期です。この記事では、日本形成外科学会などが作成した診療ガイドラインや研究をもとに、ワキガ(腋臭症)の基本、妊娠中・授乳中のにおいの変化、治療を考えるときの注意点を整理します。
ただし、妊娠中・授乳中の治療そのものについては、はっきりした根拠がまとまっていない部分も多くあります。分かっていることと、分かっていないことを分けて、できるだけ正直にお伝えします。
ワキガ(腋臭症)はなぜ起こる?まず仕組みを知る

においの正体は汗そのものではない
ワキガのにおいは、汗そのものから出るものではありません。脇の皮膚にいる常在菌が汗を分解するときに、低級脂肪酸や硫黄化合物などのにおい成分ができることで生じるとされています。
汗が出た直後はほとんどにおわず、時間がたつにつれて強くなるのはこのためです。
体質(遺伝)が大きく関わる
ワキガは家族内で見られることが多く、優性遺伝が多いとされています。耳垢が湿っているタイプ(湿型耳垢)との関係も知られています。
日本でワキガの手術を受けた79人を調べた研究では、約99%(79人中78人)が湿型耳垢の遺伝子型でした。一般の日本人では約35%です(Nakano et al. 2009)。耳垢が湿っている方は、ワキガの体質を持つ可能性が高いと言えます。
いつ頃から始まり、いつ頃ピークになるのか
ワキガは、脇毛が生え始める頃に始まることが多く、成長とともににおいが強まって、20歳前後でピークを迎えます。壮年期以降は徐々に軽くなっていくとされています。
つまり、もともと体質がある方は、妊娠・出産の年代にはすでににおいが出ていることが多く、妊娠をきっかけに初めて発症するとは限りません。
妊娠・出産とワキガの関係はどうなっている?
妊娠中・産後に「においが変わった」と感じるのはなぜ?
妊娠中は、ホルモンのバランスが大きく変わります。つわりの時期には、においの感じ方そのものが変わる方もいます。また、産後は睡眠不足や慌ただしい生活で、汗をかく場面も増えます。
「いつもと違う」と感じる背景には、においの感じ方の変化や生活の変化が重なっていることもあります。
ホルモン変化がワキガを悪化させるという根拠はある?
結論から言うと、妊娠・授乳によるホルモン変化がワキガを強くする、あるいは弱くすると言い切れる、はっきりした根拠は確認できませんでした。妊娠や授乳とワキガの関係について、学会がまとめた資料にもまとまった記載は見当たりません。
ネットの情報で「妊娠するとワキガになる」「授乳中は悪化する」といった表現を見かけても、鵜呑みにせず、気になる場合は診察時に医師に相談するのが安心です。
ストレスや睡眠不足との関係
ストレスによって発汗が増え、においが悪化する可能性があるとされています。慣れない育児や睡眠不足でストレスがたまりやすい時期は、においが気になりやすくなるかもしれません。
一方で、入浴の回数や食生活とワキガの関係については、はっきりした根拠はありません。「肉を控えれば治る」といった過度な食事制限は、授乳中の栄養面からもおすすめできません。
妊娠中・授乳中でも続けやすいセルフケア

脇毛の処理でにおいが軽くなることがある
脇毛を処理すると、においが改善するとされています。剃毛すると、24時間後まで有意ににおいが改善したという報告があります。汗やにおい成分が毛に残りにくくなるためと考えられます。
ただし、レーザー脱毛のあとに、かえって汗やにおいが気になり始めた報告もあります。妊娠中・授乳中の脱毛については、事前に医師や施術先に確認しましょう。
制汗剤・デオドラントは「一時的」と理解して使う
制汗剤やデオドラントは、一時的なにおいの軽減には有効です。医療機関では塩化アルミニウムを使うことが多く、いずれも保険適用外です。
妊娠中・授乳中に使って問題がないかどうかを示す、はっきりした根拠は今回確認できていません。肌が敏感になりやすい時期でもあるため、使う製品は医師や薬剤師に相談してから選ぶと安心です。
こまめな汗ふきと衣類の工夫
汗をかいたらこまめにふき、通気性のよい素材の下着を選ぶことで、菌が増えにくい環境に近づけます。授乳パッドや授乳服などで脇が蒸れやすい場合は、着替えをこまめにするのも一つの方法です。
セルフケアは、においを消すものではなく「軽くする」ものです。ここまでやっても気になる場合は、無理に我慢しなくて大丈夫です。
妊娠中・授乳中に治療はできる?考え方を整理
手術の時期は医師の判断になる
ワキガ手術の適応は、医師の判断と十分な説明をもとに決めるとされています。妊娠中・授乳中に手術を受けられるかどうか、いつから受けられるかについて、具体的な時期を示した記載は確認できませんでした。
そのため、「妊娠○か月まではできる」「授乳が終わってから」といった具体的な時期をここで断定することはできません。診察時に、妊娠・授乳の状況を伝えたうえで、医師と一緒に決めていくことになります。
麻酔や薬については必ず医師に伝える
手術では麻酔や術後の薬を使うことがあります。妊娠中・授乳中は、お母さんと赤ちゃんの両方に配慮した判断が必要です。診察では、妊娠週数、授乳の有無、服用中の薬、アレルギーの有無を必ず伝えてください。
「今は手術せず、産後の生活が落ち着いてから改めて検討する」という選択も、一つの考え方です。
塗り薬の使用も自己判断はしない
抗生物質の塗り薬は、一時的に軽くなることがあっても、耐性菌の問題から安易に使うべきではないとされています。消毒薬を含む製剤は、継続して使うことで有効とされています。
いずれも、妊娠中・授乳中に使ってよいかどうかは、個別の状況によって異なります。自己判断で使い始めず、医師に相談してください。
治療を考えるときに知っておきたい手術の基本
診療指針での手術の位置づけ
日本形成外科学会などがまとめた診療指針では、剪除法(皮弁法)は、においの原因となるアポクリン汗腺を直接見ながら取り除けるため有効で、最も確実な外科治療法の1つとされています。保険診療で行う外科的治療の第一選択も、皮下剪除法です。
医師の技術によって効果に差が出る点も指摘されており、経験のある医師を選ぶことが大切です。
手術でどのくらい変わるのか
日本人の研究では、皮弁法の手術を受けた79人のにおいを、においセンサーで測定しました。手術前の強さを100とすると、手術後は約4割(約39)まで下がっています(Kubomura et al. 2022)。平均年齢は28.8歳、男女比は4対3でした。
なお、これは手術後の変化を客観的に測定した研究であり、妊娠中・授乳中の方に限った結果ではありません。
手術以外の方法もある
超音波吸引法など、手術以外の方法もあります。ただし、保険適用外のものが多く、効果や再発のしやすさも方法によって異なります。
どの方法が合うかは、においの程度、脇の状態、妊娠・授乳の状況、ご希望によって変わります。複数の選択肢を比べながら、納得して選ぶことが大切です。
それでも気になるときは医療機関へ相談を

ひとりで抱え込まなくて大丈夫
妊娠中・授乳中は、周りに気を使って「こんなことで相談していいのかな」と悩む方が多い時期です。しかし、ワキガは医療機関で相談できる悩みです。相談したからといって、その場で治療を決める必要はありません。
医療機関への相談
創業74年以上のドクターミナガワ渋谷整形には、日本専門医機構認定の形成外科専門医が在籍しています。2025年の年間ワキガ手術件数は831件です。直視下反転剪除法は、汗腺を直接見ながら取り除く、再発しにくい根治性の高い治療法です。なお、ミラドライについては、当院では推奨していません。
ワキガ治療(皮弁法)は、症状の程度によっては保険適用で受けられる可能性があります。保険適用の可否は診察時に確認いたします。また、抜糸のための来院はなく、ご来院は手術日と、手術の翌日または翌々日の消毒日の合計2日です。育児中で通院の時間がとりにくい方にも、相談しやすい内容かと思います。
相談のときに伝えておきたいこと
診察をスムーズに進めるため、次の内容をメモしておくと便利です。
- 妊娠週数、または授乳中かどうか
- 現在服用している薬やサプリメント
- 薬や麻酔でアレルギーが出たことがあるか
- においが気になり始めた時期と、家族に同じ悩みがあるか
受診のタイミングに正解はない
「今すぐ手術したい」方も、「情報だけ知りたい」方も、どちらでも構いません。妊娠中は相談だけにして、産後に改めて考えるという進め方もできます。
まとめ
妊娠・授乳によるホルモン変化とワキガの関係には、はっきりした根拠が確認できていません。「妊娠したからワキガになった」と思い込まず、においの感じ方や生活の変化も含めて考えることが大切です。
妊娠中・授乳中の手術の可否や時期は、一人ひとりの状況により異なるため、具体的な時期を自己判断で決めず、診察時に医師へ相談しましょう。セルフケアで軽くしながら、無理のないタイミングで治療を検討することができます。
ひとりで悩まず、まずは無料カウンセリングへお気軽にお越しください。
参考文献
日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会 編. 形成外科診療ガイドライン 改訂第2版 第Ⅶ編 腋臭症診療ガイドライン. 金原出版; 2021.
Nakano M, et al. BMC Genet. 2009; PMID 19650936
Kubomura K, et al. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2022; PMID 36299814
