多汗症の原因は?改善方法や病院での治療方法も解説
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脇や手足の汗が多くて困ったことはありませんか?暑いときや緊張したときなどは誰しも汗をかきますが、日常生活で困るほどの汗が出る場合は多汗症という疾患かもしれません。仕事や勉強に集中できない、他人からの視線が気になるなど、生活の質が大きく下がる疾患である一方で、3人に2人は多汗を理由に病院を受診できていないという統計もあります。病院で多汗症の治療を受けることで、多すぎる汗の悩みが改善できるかもしれません。今回は、多汗症の原因や、病院で受けられる多汗症の治療方法などについて解説します。
多汗症の症状
多汗症の症状では、全身または体の一部から過剰な量の発汗がみられます。汗によってニオイ、冷え、皮膚のめくれなどに悩まされることもあるほか、他人の目が気になるなど、日常生活にさまざまな支障があります。
全身性多汗症
全身性多汗症では、体全体に過剰な汗をかきます。「汗っかきな体質だから仕方ない」と思っている方もいるかもしれませんが、日常生活に支障が出るほどであれば受診を検討したほうがよいでしょう。とくに原因が見当たらないこともありますが、なんらかの疾患が隠れている場合や、薬の影響で全身に過剰な汗をかくこともあります。
局所性多汗症
局所性多汗症では、脇、手、足、顔、背中、もも裏など、特定の部位に過剰な汗をかきます。とくに、汗腺という汗を分泌する器官が多く集まるパーツに多くみられるのが特徴です。脇の汗が異常に多くてグレー色の服が着られない、手汗が多くて書類が破れてしまう、などの悩みを抱えているのであれば局所性多汗症の可能性があります。
多汗症の原因
多汗症の原因は、大きく分けると原発性(特発性)のものと、続発性のものがあります。
原発性(特発性)多汗症の原因
多汗症のうち、原因がはっきりとわからないものを原発性多汗症といいます。現在のところ、脳に何らかの異常がおきていて発汗を促す交感神経のはたらきが強く出ているのではないかとする説や、遺伝性の疾患であるという説もあります。海外の研究では、原発性多汗症患者さん家族に同じような症状の人がいるパターンが6割ほどあったという報告もあります。日本でも、家族内発症がみられる重症の多汗症患者さんの家系において、原因となる遺伝子の存在が示唆されていたり、3割程度の症例で家庭内発症が認められたりと、遺伝の可能性が疑われています。ただし、家族内で発症する割合については研究によって数値が異なっていることなどから、遺伝性疾患だと決定づけられるまでには至っていません。研究は進められているものの、原発性多汗症の原因究明まではできていないのが現状です。
続発性多汗症の原因
何らかの疾患や薬の影響など、過剰な発汗の原因がわかるものを続発性多汗症といいます。続発性多汗症の原因には、次のようなものがあります。
- 薬剤:ステロイド薬、非ステロイド性抗炎症薬、睡眠導入剤など使用した際に、副作用として大量の発汗がおこることもあります。
- 感染症:ウイルスや細菌への感染などに感染すると発熱によって大量の汗をかくことがあります。
- 内分泌/代謝性疾患:甲状腺機能亢進症、糖尿病など内分泌や代謝性の疾患により大量の発汗がある場合もあります。更年期障害によって性ホルモンの分泌が低下することで自律神経が乱れ、多汗に悩まされる人も少なくありません。
- 神経学的疾患:神経変性疾患のひとつであるパーキンソン病でも発汗が多くなることが知られています。脳梗塞や怪我などで脳や神経が障害されたときも汗が増えることもあります。
- 精神疾患:あがり症や社会不安障害など不安や緊張を感じたときに交感神経が優位になり発汗量が増えることがあります。
多汗症の診断基準
暑い場所にいたり、運動したり、緊張したりしたときに汗をかくのは普通のことです。それゆえ多汗症といえるほど過剰な発汗なのか、正常な範囲なのか、自分では判断しづらいところでしょう。「汗で受診してもいいの?」「真剣に悩んでいるのに『誰でも大汗をかくときはありますよ』で済まされるのでは?」と受診をためらっている方は、次の項目であてはまるものがないかチェックしてみてください。
- 最初に症状が出たのは25歳以下
- 左右対称に発汗がみられる
- 睡眠中は発汗が止まっている
- 1週間に1回以上多汗で困ることがある
- 家族に似た症状の人がいる
- 汗によって日常生活に支障をきたしている
原発性局所多汗症診療ガイドラインでは、明らかな原因がないまま過剰な発汗が6カ月以上続き、先に挙げた症状のうち2つ以上を満たすことを多汗症の基準にしています。もし2つ以上当てはまるのであれば、受診を積極的に検討してみましょう。
多汗症の問診
過剰な発汗を主訴に病院を受診した場合、まずは問診がおこなわれるのが一般的です。
自覚症状については、下記の4段階に症状の強さを分類して尋ねられるかもしれません。
- まったく気づかないあるいは邪魔にならない程度
- たまに邪魔になるが我慢できる程度
- どうにか耐えられるがよく邪魔になる
- 耐えがたくいつも邪魔になる
「脇汗がひどく1日に何度も着替える」「字を書くときに書類が濡れて破れる」「足の汗でいつも冷えに悩まされている」など、困っていることがあれば問診時に遠慮なく伝えましょう。
多汗症の検査
多汗症の検査には、ヨウ素でんぷん法と、換気カプセル型発汗計を用いた方法があります。いずれも痛みをともなわない検査です。問診のみで検査を実施しないこともありますが、多汗症の検査方法自体は確立されています。
ヨウ素でんぷん法
多汗で困っている部分にヨードを塗り、でんぷんをふりかけます。汗が出た部分はヨードとでんぷんがまざり、青紫色に変色することから、発汗していることがわかります。汗が出ていることや汗が出る場所は確認できますが、汗の量までは確認しづらいのが難点です。
換気カプセル型発汗計
汗の量まで計れる方法です。汗の量を調べたい部位の皮膚にカプセルを被せて空気を送りこみ、湿度の変化から発汗を計測します。そのデータを専用の記録・解析システムを通してパソコンへ取り込むと、リアルタイムに発汗の量を表示させられます。
多汗症の改善方法
普段なにげなく続けている生活習慣が、大量に発汗しやすくなる要因になっているかもしれません。交感神経が優位になると発汗しやすい状態になります。なるべく交感神経を優位にさせないようにするのがベターです。多汗症治療は病院で実施されますが、汗を少しでも改善するために自分でできる方法を紹介します。
食事
熱いものや辛いものを食べると汗が出るのは正常なことです。ただし辛いもの、酸味の強いもの、カフェインなどの刺激物は交感神経を優位にしやすくします。カフェインを多く含むエナジードリンクやコーヒーを習慣的に飲む方は、カフェインレスの飲み物に変えてみるのもよいでしょう。
睡眠の改善
寝不足が続くと、自律神経が乱れて交感神経が優位になることもあります。睡眠時間を十分にとるだけでなく、睡眠の質も重要です。寝る前に高輝度のパソコン画面やスマホ画面を見ていると、交感神経を活性化させる原因になります。就寝の2時間くらい前からは照明を落とすなどして眠りやすい環境を整えましょう。
ストレスの解消
ストレス状態が続くと交感神経が優位になり発汗しやすい状態になる場合もあります。多汗症ははたらき盛りの方が悩んでいるケースが多く、仕事などでリラックスする時間を取るのが難しいこともあるでしょう。ときには意識的に息抜きする時間をつくって気分転換をしてみてください。
続発性多汗症の治療方法
続発性多汗症は疾患や薬剤などにより発症します。そのため、多汗症の原因となっている病気が治癒したり、薬剤を変える・やめるなどしたりすれば多汗症の症状も改善すると考えられます。気をつけたいのは、大量の発汗が薬によるものだと判断して勝手に服薬をやめてしまうことです。薬の影響が原因として考えられる場合は、すぐに主治医や薬剤師に相談しましょう。
原発性多汗症の治療方法
とくに原因がなく発症する原発性多汗症の治療方法は複数あります。治療法によっては、軽症の多汗症患者さんには有効であっても、重症の多汗症患者さんにはまったく効果が感じられないこともあるでしょう。また、副作用が起きる可能性が高いことから慎重に検討する必要がある治療もあります。医師と相談しつつ、症状の程度にあわせて治療を検討するようにしましょう。
外用薬の塗布
外用薬を汗が出る部分に塗る方法です。外用薬としては、塩化アルミニウム溶液やエクロックゲルなどがあります。塩化アルミニウム溶液は保険診療対象外ですが、のちに紹介するボトックス注射などにくらべると費用はさほどかかりません。エクロックゲルは、重症の原発性腋窩多汗症であれば保険適用が可能です。(つまり、わきの下の汗にのみ保険が適用されます)。当院でも原発性腋窩多汗症の治療にエクロックゲルの処方が可能です。塗るだけなので、治療法としては手軽に始められるものです。ただし重度の多汗症患者さんでは思ったような制汗効果が得られない可能性や、皮膚の弱い方はかぶれ等が起こることもあるため、医師の指導に従って使用してください。
イオンフォトレーシス
主に、手のひらや足の裏などの多汗症に使われる治療法です。水道水の入った容器に患部を浸し、電流を流します。1回の治療時間は20分~30分程度です。10回前後で汗の量が減りますが、効果は一時的なものであるため、1週間に1回~2回くらいのペースで治療を継続します。保険適用の治療方法ですが、実施できる病院は限られており、定期的な通院が負担になる方も少なくないでしょう。高価ではあるものの、家庭用のイオンフォトレーシス機器も販売されています。
ボツリヌス注射(ボトックス)
ボツリヌス菌がつくる毒素を用いた薬を注射するのがボツリヌス注射です。交感神経から汗腺への情報伝達が遮断され、発汗を抑えます。重度の原発性腋窩多汗症では、保険診療の対象となります。当院でも原発性腋窩多汗症の治療でボツリヌス注射が可能です。効果は注射の2~3日後からあらわれ、数ヶ月にわたって持続するのが一般的です。効果の出方や持続期間には個人差があり、実施してみないとわかりません。著効したとしても、永続的な効果は得られないため、繰り返しの注射が必要です。
神経ブロック
手術によって胸部の交感神経を遮断する方法です。手のひらの多汗症に対してほぼ100%効果のある治療方法であり、重症の多汗症患者さんが最終手段として検討することもあります。患部の発汗をとめることができる一方で、代償発汗といって他の部位からの発汗が異常に多くなる合併症が頻発しているというデメリットもあります。交感神経の切断範囲を少なくするなどして代償発汗を減らす工夫もされていますが、医師と相談のうえ慎重に検討すべき治療といえるでしょう。
抗コリン剤や精神薬の内服
多汗症に対して抗コリン薬や抗不安薬などの飲み薬が用いられることもあります。まずは外用薬、イオンフォトレーシス、ボトックス注射などを検討し、それでも効果がない場合に飲み薬での治療が選択肢として挙がってきます(ただし、顔面や頭部の局所性多汗症はそれらの治療が難しいため初めから内服薬での治療が検討されることもあります)。また口の渇きや便秘、排尿障害などの副作用があらわれることもあり、効き目も個人差があります。また、使用が禁忌となる疾患もあることから、多汗症の内服薬治療においては向精神薬を熟知した医師に相談するほうがよいでしょう。
漢方薬の内服
漢方薬では、西洋医学と異なるアプローチの仕方で症状の改善を目指します。即効性は期待できませんが、体質を根本から改善していきたいという方や、他の治療方法の補助的に併用していきたいという方は検討してみてもよいでしょう。漢方薬は患者さんの体質に合う処方が必要です。そのため、漢方薬の専門医または漢方薬局に尋ねてみることをおすすめします。
ドクターミナガワ渋谷整形でも多汗症治療が可能
ドクターミナガワ渋谷整形では、ボツリヌス療法やエクロックゲルによる治療を提供しています。重度の原発性腋窩多汗症の場合は、保険診療にて対応が可能です。「脇の汗ジミがいつも気になって恥ずかしい」「滴り落ちるほどの汗が不快で仕事に集中できない」など、脇の汗でお困りの方はご相談ください。診察では多汗症の程度や他の疾患の疑いがないか、保険に適応するかどうか、など問診や視診を行ないます。通院中の疾患や、服薬中の薬があればお知らせください。「汗で病院にまで行くのはちょっと」「体質だから」とあきらめる必要はありません。日常生活で支障が出るほどの発汗でお困りの場合は、ぜひご相談ください。
まとめ
多汗症は、過剰な発汗のある疾患です。汗はみんなかくもの、という思いから受診をできずにいる人も少なくありません。病院では積極的な治療が受けられるため、大量の発汗が改善されて日常生活を快適に送れるようになる可能性があります。軽度の多汗症であれば、病院で処方される外用薬を塗るだけでも「以前より良くなった」と実感できるかもしれません。「汗のせいで勉強や仕事などやりたいことが思うようにできない」とお困りの方は、ぜひ受診を検討してみましょう。
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